育児発狂記
うわ〜〜〜〜〜キツい〜〜〜!!!
今日のお迎えはだめだった。最悪だった。
いや、言っておくが最悪なのは俺と状況で娘を最悪だと言うつもりはない。
でも完全に最悪だった。
保育園からダイレクトに近場の公園に行って砂遊びをするまではいつも通りだけど拾ったおもちゃを離そうとしない。
ずっと遊んでるもんだから「帰ろう」と呼びかけても一瞥もくれずに「いやだいやだ」だ。
俺だけ帰るふりをしても話しかけて目線もあわせずだ。
腹が減ってるのも少し寒かったのも風が強かったのも良くなかった。
花粉症も多分良くなかったんだ。
普段はもっと待てるが今日はだめだった。
娘が砂場で拾ったペットボトルを取り上げ苛立った声で「帰るよ」と伝えたらもう世界が壊れた。
泣いて喚いてもうどうにもならない。
至近距離で泣かれるとものすごく心が粟立つ。
耐えられない。
怒りと悲しみとでぐちゃぐちゃにされる。
脳に不可逆な器質的変化が生じているように感じる。
蒸しすぎた茶碗蒸しに鬆がたつように自我に心に穴があいていく。
娘も俺も悲しみと怒りで制御ができない。
対話で解決をしようにも「ねえ」の一言で再び火が付く。
わかっている。俺の声色が怖いんだ。押し殺したって怒りが見えるんだ。
目も合わせず会話も拒否されるこちらもまた感情がかき回される。
長丁場になったのも悪かった。
時間が経てば経つほど理性が感情に理由をつけようとする。
娘がそんなことまで考えている訳もないのに攻撃の意図や軽んじる意思を感じてしまう。
砂場に突っ伏す振る舞いにまで「理性的な」怒りが励起される。
こんなことして何になるんだ。
さっさと抱き上げて公園の外に連れ出してしまえば良いんだ。
失敗した対話アプローチに固執してどうなるんだ。
娘を怒りでコントロールしたくないんだ。
学習性無気力になったりするんじゃないか。
ストレスで言葉が出てこなくなってるんじゃないか。
親子の信頼関係が決定的に壊れるんじゃないか。
一時間半の戦いは終わった。
誰と誰が戦ってたのかもよくわからないし、結末がどうだったのかもよくわからない。
娘を膝にのせ、肩越しに話しかけ、「ずっとは遊べないんだ、帰ろう」ってだけの言葉を延々引き伸ばしながら喋った。
引き伸ばしたほうが伝わらないのに。
娘の足取りは重く、帰路に言葉はなかった。
風が強かった。
家の扉をあけ、迎えた妻を見た娘の言葉が踊っているのを聞く。
一段と心が重い。呼吸がしづらい。
娘はただ気持ちを切り替えただけだ。
俺がついていけてないんだ。
それでも怒りと悲しみに取り残された俺に、心底楽しそうな娘の声は刺さって、またどうしようもない苛立ちがやってくるんだ。
旅に、でたい。
知らない場所で、ひとり、無為に過ごしたい。
そうもいかないが。